Yamanashi Textile Shop 2025

FUJI TEXTILE WEEK 2025の地方芸術祭の一環として、山梨県郡内織物を紹介する期間限定のセレクトショップ「YAMANASHI TEXTILE SHOP」を開設した。

商品のセレクトは〈装いの庭〉の藤枝さんが担当し、monolumiは店舗空間全体のデザイン計画と実際の陳列施工を受け持った。


カテゴリー

Space & Exhibition Design

クライアント

富士吉田市役所
Fuji Textile Week 2025

執行項目

空間デザイン / ディスプレイ構成 / 現場監修 /〈装いの庭〉との共同設営

挑戦:廃墟空間の清潔

今回会場は、かつて織機や大型機械が並んでいた旧山叶商店2階。もとは事務室だった空間にはカーペットや郵便局のような窓口カウンターが残り、廃墟のまま数十年が経過していた。総面積は約10×9㎡、カウンターや通路を除くと実質8×8㎡ほど。近年は芸術祭やカーニバルで一時的に展示空間として使われてきたが、積年の埃とカビの臭いは相当なものだった。

今回のPOPUP STOREの空間設計のミッションは一見シンプルだった——この「廃墟空間」を「商店」に変更する。そのあとは12のブランドの商品を陳列するだけ。しかし商品はすべて布製品。ブランケット・スカーフ・ファッション小物など、繊細で埃や臭いに敏感な布製品ばかりだった。 二度の現地確認の末、芸術祭の掃除スタッフチームに依頼して長年のカーペットと脆化した床材を全て剥がし、大掃除を何度も繰り返した。清掃開始から陳列道具の搬入まで約2週間、床剥がしだけで10日近くを要した。若い大学生たちの力なしには到底成し遂げられなかった。前期の重清掃を担ってくれたチームメンバーなしには、この店舗はできなかった。

天井の石膏ボードと廃棄ソケット

天井は石膏ボードと蛍光灯のソケットは残してつづ、天井から吊り下げる高さが約2.5mしかなく、180〜230cmの大型テキスタイルを吊るすには圧迫感がある。石膏ボードと蛍光灯座を全て撤去して空間の奥行きを生み出す案を検討したが、人手と予算の限界から断念し、元の状態をそのまま残すことにした。

天井を包む予定だった布も、最終段階で空間表現への影響が大きすぎると判断して取り下げ、最終的にはスタッフの衣装布料として転用した。

極端に低い予算での廃材活用術

短期間で廃墟を芸術祭らしい「セレクトショップ」へ変えるには、通常であれば相当な予算が必要になる。今回の予算は直視できないほど限られていたが、産地ならではの素材——ウール×ポリエステルの細かな織物——と木製フレームを組み合わせ、過去の展示で使った天板や棚板を再利用しながら展示台を構成した。吊りポールは農業用の白鉄パイプを転用し、廃墟の空気感に馴染む陳列を組み上げた。主な費用は照明器具と吊り金具に集中させた。

引き算と廃墟のそのままのようさ

時間も予算も少ない中で辿り着いたのは「引き算」の空間だった。不要なものは取り除き、どう変えるべきか迷ったらそのままに任せる。使い古した天板、長く眠っていた産地ぽっさがあるウールポリ織りの布、いくつかの照明——それだけで空間は静かに整った。老いた空間には、老いた空間自身の佇まいがある。

私たちが何かを「デザインした」というより、商品たちがこの空間に自分で馴染んでいくのを邪魔しないようにしていた、というのが正直なところだ。主役が舞台の上で自分らしく輝けるよう、ただ場を整えただけ。この地の芸術祭に何らかの形で関われたことに感謝しながら、今後もここで経験を積み重ねていきたいと思っている。

FUJI TEXTILE WEEK は、伝統織物産業と現代アートが織りなす国内唯一の「布の芸術祭」として山梨県富士吉田市で開催されており、2025年は第4回目の開催となった。(会期:2025年11月22日〜12月14日)

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